1 はじめに
これまでは金融機関に対する会社債務の連帯保証人となった会社経営者は自らも自己破産の申立てをして財産を放棄し、免責決定を得て人生の再出発をする必要がありました。
しかし、2014年2月1日から「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「経営者保証ガイドライン」といいます。)が運用されることになり、必ずしも会社経営者が自己破産の申立てをしなくても、連帯保証債務の整理が可能となりました。
自己破産の手続では、原則として自由財産を除いて、すべての資産を換価しなければならず特に会社経営者がこだわる自宅の不動産を所有することは困難でした。
さらに、破産開始決定がなされたことは、官報に掲載され信用情報機関にも登録されるので、会社経営者の再出発が困難になることの大きな原因ともなっていました。
こうした事態を避けるために日本商工会議所と全国銀行協会が共同で「経営者保証に関するガイドライン研究会」という会を設置し、そこにおいて2013年12月5日に経営者保証ガイドラインと実務において留意すべき事項を記載した「Q&A」がまとめられ公表されました。
そして2014年2月1日から施行され連帯保証債務の整理(債務の減額や免除)が以前に比べ、比較的容易となりました。
2 経営者経営ガイドラインの主たる内容
このガイドラインによって、(1)債務整理申立後に新たに取得した財産、(2)差押禁止財産、(3)99万円以下の現金、(4)破産法の自由財産の拡張に係る裁判所の実務運用に従い、通常、拡張が認められると考える財産が会社経営者の手もとに残ります。
次に一定期間の会社経営者の生計費に相当する資産(一定期間×月額33万円)や、華美でない自宅等が、会社経営者に残される可能性があります。
経営者保証ガイドラインは法律ではなく法的強制力を有するものではありませんが、各地の銀行はこのガイドラインを尊重し、会社経営者の保証債務の整理にあたっています。
3 経営者保証ガイドラインの債務整理の類型
経営者保証ガイドラインの活用による債務整理ですが、主たる会社の債務と同時に会社経営者の保証債務の整理をする一体型と会社経営者の保証債務のみを整理する単独型があります。
主たる会社の債務整理が、再生支援協議会や特定調停等の整理手続による場合は一体処理が原則となっています。
経営者保証ガイドラインにより、会社経営者に一定の資産を残すためには主たる会社の整理前に保証債務整理の手続を開始しなければならなくなっていますので注意が必要です。
4 まとめ
銀行は、保証人である会社経営者が自らの資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について、表明保証をし、表明保証した資力が事実に反した場合には、追加弁済する旨の契約をする等の一定の条件を満たした場合には、保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除に誠実に対応することになっており、各地の銀行もホームページ等でそのことを誓約しています。
このガイドラインに沿って会社経営者の連帯保証債務を整理することは実際にはあまり容易でないと思われますが長期間、取引先の銀行と取引きをし、誠実に取り引きをしていた会社経営者にはインセンティブとして、華美でない自宅等の保有も認めてくれることもありえますので、会社経営者の自己破産の申立て前にガイドラインによる整理も考えてみたらよろしいかと思います。
当事務所は50年以上の歴史を有し、今までに数多くの中小零細会社の整理も担当しており、会社経営者の苦悩も共有しています。
中小零細会社の経営者は一人で悩まずに、まず当事務所にご相談下さい。
すぐに解決策はみつからなくても、いく分かはお気持ちが楽になるものと思われます。