1 はじめに
今、静岡県内でも会社破産が増加しています。 帝国データバンク発刊の「週刊帝国ニュース 静岡県版」を見ますと、県内各地の地方裁判所本庁、支部に申立てられた5、6件の会社破産の記事が掲載されています。
コロナウイルスの感染化の中では、銀行による金融債務の元利金の返済猶予や、コロナ融資が実施されていたため、会社破産の数は減少していましたが、今は、返済猶予の措置はなくなり、コロナ融資の返済も開始されたため、会社の破産数の増加の原因となっています。
長年経営してきた会社の破産の申立てをすることは、代表者のお気持ちを考えると、まことに切ないものがあります。
家族のこと、長年働いてくれた従業員の生活のことを考えると、会社破産の決断は忍びないものがあります。
会社経営者のほとんどの方が、今まで仕事を通じ、社会に貢献してきたものと思いますし、日本の会社の大半を占める中小零細の会社が日本経済推進の原動力であることは、今も昔も変わりありません。
会社の経営が立ちいかなくなったと思い始めたら、借金をしてまで経営を継続し、その結果、益々経営状況が悪化する事態を避けるために、勇気を出して当事務所に相談してみませんか。
会社破産の申立てをすることも一つの選択肢ですが、その他の法的手段もあるかもしれません。
会社の破産の申立てをすれば、今までの経営の全てがマイナス評価されるというわけではありませんし、ましてや、経営者自身の人生が全て無になってしまうことは全くありません。
今まで従業員や自分の家族の生活の支えになっていたこと、経営を通じ、社会に貢献してきたこと等が全く否定されるわけではありません。
経済情勢は常に変動していますし、その中で経営状況が悪くなり、債務が過大になってしまうことはよくありますし、それがすべて経営者の責任であるとはいえません。
会社破産をしても、その後の人生を立派に送っている方も多いことは、当事務所も多数知っています。
2 会社破産の手続の概要
会社破産を選択した場合の手続の概要は次のとおりです。
まず、当事務所の担当弁護士が会社の経営者から事情をお聞きし、申立書作成に必要な決算帳簿等の書類を提出していただくことになります。
その上で、静岡地方裁判所に提出する会社破産の申立書を作成し、添付書類と共に、同裁判所に提出することになります。
裁判官はこの書類を点検し、場合によったら、会社の経営者と当事務所の担当弁護士と面談し、破産理由がありとすれば「破産開始決定」がなされます。
同時に、裁判官は破産管財人の弁護士を選任し、破産管財人が会社破産の管理や負債の調査等をします。
当事務所は、会社破産の申立てをする直前に、会社の債権者に受任通知をします。
この段階で、会社の債権者は経営者やそのご家族に対し、連絡を取ったり、直接請求したりすることはできなくなります。
あとは裁判所の手続によって、破産手続が円滑に進行することになります。
破産手続を選択する場合、会社の消滅により、従業員は職を失うことになりますので、普通の場合、会社破産の申立てをする直前に、従業員に対し、事態を話し、解雇予告手当てを支払い、退職してもらう必要が生じます。
この場合、会社の経営者は誠意をもって従業員に接し、逃げ回ってはなりません。
又、解雇予告手当や退職金等の労働債権は予め用意し、賃金不払い等の事態は避けることが肝要です。
条件を満たせば、労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度も用意されていますので、この説明をする必要もあるかと思います。
その後、破産管財人によって債権の調査等がなされ、静岡地方裁判所において債権者集会が開催され、配当可能な資産があれば配当手続に移行し、配当する資産がなければ破産手続廃止となります。
この段階で会社は消滅するということになります。
3 まとめ
以上が破産申立てから破産が終了するまでの流れですが、いずれにしましても、会社の経営が行き詰ってしまったなら、どのような法的措置を選択するかを早めに決断しなければなりません。
当事務所は50年以上の歴史を有し、今までに数多くの会社破産の申立てをしています。
会社の規模の大小は問いませんので、一人で悩んだり苦しんだりせずに、当事務所に一刻も早くご相談下さい。
会社の破産の選択をしない場合でも、会社の経営者の皆様方のお気持ちがいくらかでも明るくなるとすれば、担当弁護士としても幸いです。