1 はじめに
会社が資金繰りに窮し、従業員の給与の支払いや取引先への支払いに困ることがあります。
会社経営者が従業員に対して給与を支払わない場合は、労働基準法によって、会社とその代表者には刑事罰が課されることになります。
このように、従業員に対する給与の未払いには罰則があり、会社は何をおいても支払う義務があります。取引先に対する買掛金等の未払いに対し刑事罰はありませんが、放置しておくと会社の財産に仮差押がなされ、又民事訴訟も提起されることになります。
2 このような事態にどう対処したらよいか
会社経営者の資産がある場合には、刑事罰の適用を避けるため、経営者が会社に給与の支払いや取引先への支払いに充当するために資金を貸し付けることも必要になるでしょう。
しかし、多くの場合、会社の経営者は会社に資金がない場合には、自らのお金を拠出して経営をしていることが大半で、支払うことができないことは、自らの資金も底をついていることを意味しています。
このような場合、会社をたたむことも視野に入れ、従業員への給与の支払いについては、賃金確保法に基づく労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度の利用をしたらよろしいかと思います。
立替払いの要件は、①事業主が労働者災害補償保険の適用事業所で、1年以上の事業活動を行っていたこと、②事業主が倒産したこと、③請求者が労働基準法上の労働者であること、④請求者が、各倒産手続の申立て、または、事実上の倒産認定申請が行われた日の6か月前の日から2年間の退職者であること、⑤定期賃金、退職金が未払いであること(総額2万円未満は対象外)、⑥退職日の6か月前の日から立替払請求日の前日までに支払期日が到来していること、⑦破産手続開始決定日または事実上の倒産の認定日から2年以内に立替払請求が行われること、となっています。
従いまして、破産の申立て等が要件になっていますので、倒産と認定されない場合には、そもそも、この立替払いはなされません。
従業員への給付の支払いが苦しいということだけでは、この法律の適用はありません。
取引先への支払いが困ることについては国の救済制度はありませんので、会社に破産原因があれば、意を決して裁判所に自己破産の申立てをすることがベターです。
仮に、会社の債務について、会社経営者が連帯保証している場合には、会社経営者個人の自己破産の申立てをする必要があります。
この場合、会社経営者の詐欺的手法により、会社の債務が過大になったというような事実がない場合には、会社経営者には免責が認められ、債務の支払いをすることはなくなります。
3 まとめ
誠実に会社の経営をしてきた経営者がほとんどですから、従業員に対する給与の支払いや取引先に対する債権の支払いができなくなり、それが一時的なものでない場合には、自己破産の申立てをして会社を消滅させ、人生の再出発を企図した方がよろしいかと思います。
会社経営者に裁判所による免責決定かあれば、どのような職業にも就けますし、お金を一定期間借りることができないということを除いては、社会的、経済的に何の不利益もありません。
苦境に陥った会社経営者の皆様は、会社を再建することは不可能だと思った時は、意を決して、当事務所にご連絡下さい。
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