1 はじめに
経営者にとって、会社の資金繰りはとても重要なことです。
月次試算表や直近の決算書で、表面的に利益が出ているような状況でも、買掛金の支払いや既存の借入金の支払い等に追われて会社の経営資金が足りなくなり、資金繰りに頭を悩ますことがあります。
利益を追求することは、会社経営にとっては重要なことですが、売掛金の回収状況や売上げに応じた借入金の返済に気を使い、収支のバランスを考えて経営することがそれにも増して重要です。
経営者は上記のことを常に頭におき、資金繰りに配慮して経営をする必要があります。
そこで、ここでは資金繰りが厳しくなった場合、どのような処置をとったらいいか考えてみることにします。
2 コロナ関連融資の返済開始と資金繰り悪化の対処法
2020年から2021年にかけて、コロナ関連融資として、日本政策金融公庫、銀行等の民間金融機関から無利子、無担保でのいわゆるゼロゼロ融資がなされ、中小零細会社のほとんどの会社が融資を受け、その融資の総額は、42兆円に達したとのことです。
このゼロゼロ融資は資金繰りの厳しい会社の経営を継続することに大いに役に立ちましたが、ゼロゼロ融資の返済が明らかにできないと思われる会社も借金したため、返済が開始された現在では返済に行きづまり、破産申立てを余儀なくされた会社もあります。
このゼロゼロ融資の返済が開始されたことにより、資金繰りが悪化した会社も数多く存在します。
資金繰りが悪化した場合、会社はどのような方法で対処すべきでしょうか。
(1) 追加融資を申し込む前にやるべきこと
資金繰りが厳しくなったと感じたら、会社の経営者にまず浮かぶことは、取引銀行から追加融資を受けることです。
しかし、銀行は返済が厳しいと思ったら、まず追加融資はしてくれません。
そこでまず追加融資を申し込む前に、次のようなことをすべきです。
①資金繰りを楽にするために、売掛金の支払期限を早めにできるか否か、取引先と話しあう必要があります。
そして買掛品の支払いをもう少し先に延ばせるか否かについて、買掛先と交渉し、協力してくれる取引先があれば、支払条件をゆるめてもらって下さい。
そうすれば、資金繰りは少し楽になりますが、一方会社の信用をなくすことにもつながりますので、十分に注意して交渉しなければなりません。
②次には経費を削減することを考えなければなりません。
経費に無駄がないかを確認し、人件費等の見直しも行う必要があります。
ただし、人件費等の行き過ぎた削減は、ふだんから真面目に就労している従業員のやる気をなくさせ、ただでさえ不足している労働力が会社外に流出してしまう原因ともなりますし、さらに労働紛争の原因ともなりますので、特に注意が必要です。
いずれにしても、従業員に協力を求め、話し合いの上、円滑にことを進めることが大切であり、一方的な押しつけは禁物です。
③在庫を減らすことも大切なことです。
在庫をかかえすぎるとお金が会社に入らず、資金繰りが悪化する原因になります。
又大量の在庫をかかえすぎますと、会社内にある現金や預金が少ないのに、製品代だけが財産に上積みされ、見かけ上の利益が多くなり、会社の本当の経営状況が見えにくくなります。
しっかりとした在庫管理を行い、早期に在庫を売却し、必要以上の在庫を持たないことがとても重要になります。それにより会社の資金繰りは相当程度よくなることになります。
④会社に使用されていない土地や機械がある場合は、これらの売却も検討する必要があります。
このような遊休資産には固定資産税等の経費がかかり、それらの維持に無駄と思われる経費がかかり、これらの売却は会社の必要経費を少なくすることにつながります。
又これらの売却で得た資金を返済等に充当すれば、会社の資金繰りが相当程度改善することにもなります。
(2) それでも、会社の資金繰りが不足している場合
中小零細会社にとって、自分の力のみでは苦況からの脱出に困難である場合、最後の手段として、金融機関からの追加融資やリスケジューリング(リスケ)を考えます。
しかし、今の金融機関は会社に返済能力がないと考えた場合、リスケにはある程度応じますが、追加融資には積極的ではないという現状があります。
長年、付きあいのある金融機関は、会社の将来性を信じ、追加融資に応じてくれることもありますが、無理をしてまでの借入れは傷口を大きくすることにもつながり、当事務所としてはあまりお勧めできません。
3 会社の資金繰りが厳しい場合の対処法
(1) 融資を受けるまでには至っていない場合
やや資金繰りの面で不安があるという会社もあるでしょう。
このような場合、会社破産の申立てをするまでには至っていないでしょうから、法的手続きとしては、会社の民事再生の申立てをし、債務額や支払い条件をゆるやかにしてもらうことが考えられます。
当事務所でも会社の民事再生の申立てをし、無事に立ち直っている例もありますから、将来の仕事が確保できる予測がある場合、民事再生の申立ても会社再建のためにとてもよい方法です。
しかし将来も経営が続行できるという目的だけで安易に民事再生の申立てをすることは、債権者にとっても迷惑になりますから、関係機関とよく話しあいをし、経済動向も慎重にみながら、自分の会社の再建ができるという確率がかなりの程度ある場合に限定して申立てることが重要ではないでしょうか。
(2) 融資を受けなければ会社の経営が続行できず、金融機関からの融資を受けることができない場合
この場合は、思いきって会社の自己破産の申立てを考えることも重要です。
会社の自己破産の申立ては、決して会社経営者の人生の終りを意味するものではありません。
会社の自己破産の申立てによって会社を経営したことの意味はなくなってしまうわけではありませんし、会社を経営することにより、社会や従業員の生活に貢献してきた過去の事実も全くなくなってしまうわけではありません。
会社は自己破産手続の終了によって消滅しますが、それが、又、会社経営者の将来の生活のやり直しのスタートラインになります。
会社の自己破産をしたけれども、その後社会に復帰し、立派に社会生活を送っている経営者も少なからずいます。
当事務所はそのような経営者の方々を数多くみています。
4 まとめ
会社の経営が苦しいからといって、周囲の者から借金をしたり、会社の負債の連帯保証人になってもらうことは絶対に避けるべきです。
当事務所は上記のようなことをし、周囲の者を巻き込み、挙句の果ては、自己破産の申立てをせざるを得なかった会社破産の例も多数知っています。
当事務所は50年以上の歴史を有し、今までに数多くの中小零細会社、個人事業者の自己破産を手がけてきました。 当事務所には長年にわたる会社破産についての知識や経験が蓄積しています。
もしあなたが自分の会社が資金繰りに困っている、あるいは困りそうになった場合は、少しの迷いもなく、当事務所にご連絡ください。
当事務所は会社経営者や個人事業者のお気持ちに沿って適切な対処法を考えたいと思っています。
相談料は無料ですのでご連絡お待ちしています。