１ 民事再生とは何か
会社の再生手続とは、経済的に苦況に陥った会社について、債権者の多数の同意を得て、かつ、静岡地方裁判所の認可を受けた再生計画を定めることにより、債務者と債権者との民事関係を適切に調整し、会社の事業や経済生活の再建を目的とすることを目的とするものです。
会社更生法や特別清算手続が対象を株式会社に限定しているのに対し、再生手続は法人の種類による制限はありません。
２ 再生手続の流れ
申立人は、再生手続申立書を作成し、負債の減免を求める再生計画案を作成して、再生計画案に債権者の同意を得て、裁判所の再生計画認可決定を受けることになります。
会社が再生手続の申立てを行うと、裁判所は監督委員を選任し、会社に対し弁済禁止の保全命令を発令します。
資金繰りに困っている会社は、この保全命令によって、債務の弁済を停止することができます。
監督委員は、ほとんどの場合、弁護士が選任されますが、会社の行う一定の行為について、同意するか否かを判断したり、会社の業務や財産の状況について調査することになり、再生手続の公平さが確保されるよう務めます。
会社は再生手続申立て後も会社資産の管理処分権を保有し、経営が続行されますが、監督委員の権限の範囲内で経営に従事するという制約があります。
民事再生の申立て後、数日以内に会社主催の債権者集会が開催されるのが普通です。
この説明会では民事再生の申立てに至った経緯、どのような内容で会社の再建をするのか、どのような方法で取引していくかを説明することになります。
この説明会には会社の代表者は勿論のことですが、民事再生の申立てをした代理人の弁護士も出席しますので、会社経営者はあまり緊張し、心配することはありません。
要は、誠実に再生についての熱意を語れば、それは会社の債権者にも伝わることになります。
通常の場合、この債権者説明会は平穏に進行することが多いので、会社経営者はあまり心配することはありません。
会社経営者が十分に語れない時は、出席している代理人の弁護士が適確に補佐してくれます。
この関門を乗り越えると、次に裁判所が再生手続開始原因があると考えると、再生手続開始決定をすることになります。
会社は、その後、何割位の額を、どの位の期間で支払うのかを定める再生計画案を作成して、裁判所に提出することになります。
この再生計画案は、再生債権の減額と支払期間の猶予を内容とするもので、会社は債権者の同意を得ることができれば、負債の圧縮と会社の収益に応じた弁済をすることになり、会社の再生を実現することができるのです。
その後、再生計画案決議のための債権者集会が裁判所で開催されます。
もっとも、この債権者集会は書面等の投票による制度もあります。
再生計画案の可決要件は、民事再生法によって、「議決権者の過半数の同意があり、かつ、議決権者の議決権の総額の２分の１以上」とされています。
再生計画案が可決された場合には、裁判所は再生計画不認可事由がない限り、再生計画認可決定をします。
この決定が確定すると、再生計画の定めに従って減免され、会社はこれによって弁済をすることなります。
再生計画による弁済が完了した場合、又は再生計画認可決定から３年が経過した場合には、再生手続終結決定がなされます。
これで名実共に会社の再建が実現することになります。
以上が大まかな再生手続の流れとなります。
３ 会社の民事再生手続の選択
どの会社経営者も自分の会社が消滅することには忍びないものがあると考えます。
会社の仕事が将来もある場合で、債権者が会社の再建に協力的な場合は、民事再生手続の申立てによる会社経営の継続も可能になるものと思います。
しかし、会社経営に将来性が見込まれない場合には、将来にわたって苦労を背負っていくようなもので、あまり民事再生手続はお勧めすることはできません。
思い切って会社破産の申立てを選択し、会社を消滅させることも負の選択とは言えません。
会社の売上げの向上は見込まれないとか、優良な顧客は離れてしまったとかの事情がある場合は、どのように考えても会社再建はできず、かえって、会社関係者に迷惑をかけることにもなります。
会社再生の申立てをする場合には、債権者や自社の商品を買ったり、技術力を評価している取引先の声も聞かなければなりません。
そして、法律の専門家である弁護士や財務の専門家である税理士や公認会計士の意見も聞かなければならないと思います。
４ まとめ
以上、会社の民事再生の手続は安易に考えない方が良いと思いますが、当事務所にも民事再生により会社経営の立て直しができた例もありますので、会社破産の申立てか、それとも民事再生の申立てかを迷っている会社経営者は５０年以上の歴史を有し、中小零細会社の経営の実情に精通した当事務所にお気軽にご相談いただけると幸いです。必ずや会社経営者の思いに沿い、適切な選択をすることができると思います。
