建設業の自己破産について

1 はじめに

 建設業を営む法人、個人事業主は全国に無数に存在し、静岡県内にも数多くの中小零細会社や法人格を有しない個人事業者がいます。

 帝国データバンクの調査によりますと、2024年の全国の倒産件数は2000件と多く、いつ倒産に至っても不思議でない高リスク会社は約3万件にも達しているとのことです。

 倒産の原因としては、去年からの時間外労働(残業)の上限規制による人手不足や人件費の高騰、資材高があるといわれています。

 又、稼働率の低下による工事の長期化や低採算で受注を余儀なくされ資金繰りが悪化する事例、受注したくても労働力が不足しており、工事を請け負うことができない事例が最近の事例として見られます。

 これは、建設業を営む法人や個人事業主の責任ということだけではなく、わが国の大手のゼネコンを中心とする工事の請負い状況や、何らの効果的な打開策をうてない国の経済政策にも多大な責任があると思います。

 建設業者は中小零細業者が多く、重層的な下請け構造の最下層の部分で工事請負額をたたかれる事例が恒常的に発生しています。

 中小零細建設業者は資金繰りが悪化しても、そこで業務の廃止を考えず、経営者がクレジット・サラ金会社から借金したり、個人の手持ちの資金を事業にすべてつぎこんで経営を続行し、その結果、二進も三進も行かなくなってしまう事例が多発しています。

 このような場合、事業の将来の見通しがつかず、銀行等の金融機関のリスケ等の協力が得られず、新たな融資は全く期待できないということも多いです。

 そうした状況で経営を継続する事は、経営者の周囲や家族に益々迷惑をかけることにもなります。

 今まで建設業の経営を続け、社会や家族にも貢献してきた実績は自己破産の申立てですべて無に帰してしまうことにはなりません。

 自己破産の申し立ては、経営者の人生の再出発への道だと考え、ひるむことなくするのがベターだと思います。

 50年以上の歴史を有する当事務所は、今まで数多くの建設業を営む会社や個人事業主の自己破産の申し立てをしていますが、多くの経営者が立ち直り、通常の生活をしてきています。

 そこで、ここでは建設業を営む会社や個人事業主の自己破産について説明します。

 

2 建設業の自己破産の特徴

 建設業者が自己破産する場合、取引先が多岐にわたり債権者が多いことが特徴の1つです。

 そのため、倒産直後は、多数の債権者が経営者のもとに、押しかけ支払いを求めるという事態も発生します。

 銀行等の金融機関は、破産というような事態に慣れており、取立てなどという行為はしませんが、日常的に取引のある債権者の中には、一時期感情的になり厳しい取立てを行うこともあります。

 建設業の自己破産の場合、他と違うことは、建設途中の仕掛中の工事があるということです。

 この場合、注意を要することは、仕掛工事の完成をどのようにするか、もし、下請業者がいる場合、工事の続行の調整をどのようにするか、完成工事後のアフターケアをどのようにするかです。

 自己破産の申立ての前、以上の点に特に注意し、関係する債権者との調整を出来る限り図っておけば、破産管財人選任後の手続が円滑に進行することとなります。

 

3 自己破産申立後の破産手続きの概要

 基本的には一般の業種の会社の破産手続の流れとかわりありません。

 但し、上記で述べましたように、仕掛中の工事がある場合、工事を完了するのか、あるいは他の業者に引き継いでもらうか等、従業員や工事関係者に慎重に対応する必要があります。

 独断で上記のことを決めるのではなく、破産管財人とも十分に協議し、破産管財人や裁判所の裁判官の意向や決定に従う必要があります。

 当事務所の過去の事例では、工事の施行を引き継ぐ業者との間で話しあいをし、破産手続き外で工事を進めることが多いです。

 

4 当事務所の建設業の自己破産申し立ての解決例

 A社は資本金3000万円の親の代から半世紀以上も続く会社でした。

 公共工事や地方の会社等から、建物の新築や改築を頼まれ、順調に営業していたごく普通の会社でした。

 しかしながら、折からの建設不況により会社の工事が減少し、年々工事請負高が減っていく中で、長年取引をしてきたメインバンクから新規の融資がなされず、人員削減等の合理化を図りましたが、身内からも借金をして経営を続ける事態になりました。

 こうした中でAの代表者は当事務所に相談し、A社の自己破産を申立てることにし、Aの社長自身もA社の金融機関の債務の連帯保証をしていたため、自己破産の申立てをしました。

 A社の自己破産の場合、身内の債権者の取り立てが1番厳しかったものの、その他の一般債権者は長い取引があり、今までに何ら迷惑をかけていなかったため、その後の破産手続きは円滑に進められました。

 又、A社の社長個人の自己破産手続きも円滑に進行し、いち早く免責決定を得て人生の再出発を図ることができました。

 A社の社長は自宅を売却し、借家に住むことになりましたが、厚生年金の支給があり、その他の家族の協力もあり、不安な日々から脱し、平穏な日常生活を回復することができるようになっています。

 

5 まとめ

 コロナ禍を経て、経営改善があった会社もありますが、これはわずかです。

 わが国の会社は、中小零細業者が多く、かつ、二重構造の常態化により景気の回復は下層の会社には及んでいません。

 とりわけ、人口減少が進む中で建設業者の経営は将来もあまり期待できないと思われます。

 この事態を耐え忍び、次の業績回復に向け、懸命に事業を継続する会社が大半ですが、もし、苦境に陥り、明日の見通しが立たなくなったと考えた場合には、すぐに当事務所にご相談ください。

 ご相談いただければ、当事務所は建設会社や建設事業主とともに適切な解決策を考えていきたいと思っています。

 相談料は無料で中小零細会社や事業主の立場に立って、真剣に解決策をさぐりたいと考えていますので、心を気楽にして当事務所を訪ねて下さい。

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